森林立地
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山形県におけるブナ豊凶予測の検証
遠藤 貴己森 貴之伊藤 聡小山 浩正
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キーワード: 開花, 結実予測, 虫害, ブナ, 豊凶
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2013 年 55 巻 2 号 p. 127-132

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抄録

ブナ林の更新成功や野生生物の管理・対策には,豊凶を予測できると都合が良い。北海道では,すでにその技術が開発されている。それによると豊作の条件は500個/m^2以上の雌花が開花し,かつ天敵回避のためにそれが前年の20倍以上あることとされた(以下では,雌花数を開花数として表し,初期に雌花序として落下したものも2倍にして開花数に含めている)。したがって,翌年の作柄の予測には当年と翌年の開花数を推定する必要がある。前者はシードトラップ,後者は採取した枝の冬芽の中で花芽が占める割合(花芽率と呼ぶ)から推定できる。山形県でもこれに準じて予測を公開しているが,地域により気象や天敵密度が違うので,豊作の条件も異なるだろう。すでに著者らは既報で山形県独自の豊作条件として開花数が350個/m^2以上で,かつ前年の10倍以上を提案しているが,この研究は調査期間が短かったため,まだ信頼性に乏しかった。本研究では,既報の結果に新規の地域と年度のデータを加えて山形県の豊凶条件を検証した。県内19林分における調査の結果,山形県では松井らによる豊作条件の適合性は高いと判断された。また,開花数が350個/m^2以上になると,同時に前年比10を満たすことが多かった。つまり,開花数のみでその年の作柄を予測できることになる。このことは,花芽率から翌年の開花数を推定するために枝採取を行うだけで豊凶予測が可能であり,当年の開花を知るためのシードトラップの設置は不要あることを意味している。したがって,北海道で開発された手法に比べて,簡便で何処でもできる点で汎用性の高い手法と言える。

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© 2013 森林立地学会
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