森林立地
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和歌山県南部の人工林伐採跡地に成立した林分の構造
中森 由美子栗生 剛
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2014 年 56 巻 2 号 p. 97-106

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抄録

和歌山県南部の暖温帯域に位置するスギ・ヒノキ人工林伐採跡地において,伐採後10〜24年を経た若齢段階の林分構造を調査し,植生タイプによる林分特性の違いを調べた。13林分29方形区(10×10m, 1林分3方形区のみ5×5m)に出現した胸高直径1cm以上の木本類の調査から,林分は微地形や伐採後年数,標高の違いによって特徴付けられた4つのタイプに分類できた(陽樹・先駆種型,常緑広葉樹I型,針葉樹型,常緑広葉樹II型)。アラカシ,シイ類を主とした常緑広葉樹I型は凸地形に,クスノキ,カナクギノキ,カラスザンショウを主とした陽樹・駆種型は凹地形に分布する傾向がみられた。方形区数の多かった陽樹・先駆種型,常緑広葉樹I型において,林分の質的な回復状況を示す非先駆性高木の幹密度,胸高断面積合計,平均樹高は量的な回復状況を示す林分の胸高断面積合計が増加するほど増加した。一方,伐採後年数の増加による非先駆性高木の幹密度,胸高断面積合計の増加はみられなかった。陽樹・先駆種型および常緑広葉樹I型の植生回復は,伐採後の経過時間によって植生回復の度合いが一律に決まるのではなく,一定量の樹木の定着・成長が見込めれば量的に回復するという点で類似していた。伐採後10〜24年経過した林分において,常緑広葉樹I型および陽樹・先駆種型は樹種の違いを除けば,非先駆性高木の定着量などの林分構造に大きな違いはないと考えられた。

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© 2014 森林立地学会
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