抄録
最近の研究成果に基づき,東北地方から北海道における最終氷期以降のブナの地史的変遷についてレビューした。花粉分析の結果に基づけば,東北地方北部においても晩氷期以降ブナ属花粉が有意に出現する地点があり,また針葉樹の減少と同時にコナラ属と同調してブナ属花粉が増加する地点は,最終氷期末期にはブナが存在したと考察した。北海道におけるブナの北上は,最近記載された分布北限域の外側の孤立したブナ林の研究や生育適地の研究から,半島脊梁地域を中心に北上した可能性を指摘した。また,北海道に最終氷期の逃避地が存在したとすると日本海側南部(松前半島)であったに違いない。