地がき(かき起こし)は,林床に密生するササを大型機械で根系ごと除去して鉱質土層を露出させ天然更新を図る更新補助作業である。本稿では北海道林業における地がき作業の経緯,および地がきの成否に関わる要因について,主に土壌撹乱影響についての既往研究を基にとりまとめた。地がきは1960年代から北海道で広く実施され,地がき地の更新成功率は極めて高かった。過去の地がき事例からは,(1)表層土壌物理性の保全とササ除去の両立が更新要件であり,(2)地がきカンバ林の成長は非地がきカンバ林より良好であるものの,(3)養分条件に及ぼす表層土壌の除去影響は無視できないことが示唆された。既往の地がきカンバ林研究は大多数が林齢20年生以下の林分を対象としている。このため,地がきカンバ林から最終的に収穫可能な材積や径級,およびそれらに対する地がきによる土壌攪乱の影響は不明である。さらに,地がきによる低コストのカンバ林造成が,主伐期を迎える北海道トドマツ人工林伐採後の選択肢として有望であると提言した。今後,地がきカンバ林業を実用化するためには,過去の不成績造林地の原因究明を図り,低標高地で懸念される草本繁茂の対策をとるなど,地がきの仕様を立地条件に合わせて改良する必要がある。