森林立地
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短報
東京大学千葉演習林の高齢なスギ人工林のバイオマス拡大係数
丹下 健
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2018 年 60 巻 2 号 p. 83-86

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抄録

森林吸収源の算定に用いられるバイオマス拡大係数(拡大係数)の加齢に伴う変化を,東京大学千葉演習林の高齢級を含む既報のスギ人工林の現存量調査結果を用いて検討した。拡大係数は,高齢なほど,平均樹高が高いほど,小さい傾向が認められた。千葉演習林と他県の林分でそれらの関係は異ならなかった。千葉演習林の林齢80年生以上の7林分の拡大係数は1.14 ± 0.05(平均 ± 標準偏差)であり,日本が森林吸収源の算定に用いている21年生以上のスギ人工林の拡大係数1.23より小さかった。高齢林分の葉現存量は,若齢林分の葉現存量と同等か少ない傾向にあり,枝現存量は同等か多い傾向にあった。拡大係数を規定する幹現存量と枝・葉現存量の関係は,幹現存量が100 t ha-1未満の場合は31.7 ± 6.6 t ha-1,100~200 t ha-1の場合は36.4 ± 6.1 t ha-1,200 t ha-1以上の場合には49.6 ± 9.5 t ha-1であった。幹現存量が200 t ha-1以上で幹現存量の増加に伴って枝・葉現存量が増加する傾向は認められなかった。高齢林での枝現存量の増加は加齢に伴う拡大係数の低下傾向を緩和するが,その影響は限定的であり,蓄積の大きい高齢林の拡大係数は壮齢林より小さくなると考えられた。

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© 2018 森林立地学会
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