異なる光環境下におけるチシマザサの稈及び地下茎の樹液流の日変化を観察することで,1)ラメットの水収支において他のラメットからの地下茎を介した水移動がどの程度寄与しているのか,2)地下茎を介した水移動が一日の中でいつ寄与しているか,生じているか,を明らかにすることを目的とした。2本のラメットとそれを繋ぐ地下茎を1つのフラグメントと定義し,異なる光環境である林床部及び小ギャップにおいてフラグメントの稈及び地下茎で樹液流速を測定した。その結果,稈に挟まれた地下茎で樹液流の向きが日中にはっきりと変化し,その流れは小ギャップのフラグメントにおいてはフラグメント端の水要求量の綱引き関係に従って変化した。興味深いことに,林床部においては晴天下の日中に樹液流が稈から地下茎へ移動しており,その移動(下降流)は稈における日積算樹液流量の約60%となった。林床部では樹液が地下茎を介してフラグメントから流出しており,小ギャップではフラグメントにおける日積算蒸散量(稈における樹液の上昇流)に対して,地下茎を介したフラグメント外からの樹液の流入が57.4~82.3%となった。これらのことから,林床部及び小ギャップにおけるラメットはそれぞれ供給者及び消費者の役割を担っていると推察され,地下茎を介した水移動はラメットの水不足に対して日中に柔軟かつ速やかに生じていると考えられた。