森林立地
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論文
島根県隠岐島後における森林渓流水質の空間変動
藤巻 玲路山下 多聞 葛西 絵里香
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キーワード: 隠岐諸島, 森林渓流, 水質, 地形
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2022 年 64 巻 2 号 p. 57-64

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抄録

本研究では,隠岐島後(どうご)の森林渓流水質の特性を明らかにするため,隠岐島後の森林渓流81ヶ所の渓流水質を調べ,採水地の集水域の地形および植生との関連を考察した。隠岐島後の森林渓流水では,日本全国の平均的な森林渓流水に比べ,4.9倍のCl濃度が観測された。また,電気伝導度およびNa,K,Mg2+の濃度についても大きな値を示した。これらのイオンの全国平均との濃度差におけるClとの比は,海水における元素比に近いことから,海塩の影響が強いことが考えられた。HCO3は,Mg2+およびCa2+濃度と強い正の相関関係があり,Mg2+およびCa2+のカウンターアニオンとして重要であることを示唆している。また,pHやMg2+,Ca2+およびHCO3濃度は集水域の標高が高いほど低下する傾向を示し,高標高の集水域では集水域の酸緩衝能が相対的に小さい可能性がある。NO3濃度は平均23.4 μmol L-1であったが,地点間変動が大きく,およそ1/4の渓流において隠岐諸島における窒素沈着で生じる窒素飽和状態の森林渓流で予測される濃度を超えた。渓流水NO3濃度は集水域最高地点の標高や傾斜角の最大値と最小値の範囲と正の相関を示し,起伏の大きい地形を持つ集水域において窒素流出が生じやすいことが示唆された。

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