森林立地
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論文
森林生態系への火山灰加入のリン施肥効果:
火山灰加入量の異なるコナラ林の比較検証
高木 真由向井 真那 吉田 智弘佐々木 真優水上 知佳北山 兼弘
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2022 年 64 巻 2 号 p. 65-76

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抄録

火山灰土壌の主成分である低結晶鉱物は高いリン酸吸着能を示すため,火山灰土壌のリン可給性は低いとされているが,その一方で土壌の全リン濃度は高い。森林生態系での火山灰土壌における低結晶鉱物と土壌リン可給性やリン循環との関係は明らかになっていない。本研究では日本に広く分布するコナラ林を対象に,火山灰加入量の違いによる土壌の栄養塩動態の違いとそれが樹木に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。調査地は日本の北緯35°前後のコナラを第一優占種とする森林で,火山灰の加入量の大小で各4調査地ずつ選定した。2019年8~9月に各調査地で土壌を0~5,5~15,15~30 cmの3層から採取し,コナラの林冠から生葉を採集した。火山灰加入量の指標となる土壌中の活性Al・Fe,リン画分,交換態陽イオン濃度,生葉中の炭素,窒素,リン濃度を測定し,最大樹高を推定した。活性Al・Fe濃度と土壌中の栄養塩濃度はいずれも火山灰土壌で有意に高くなった。また,活性Al・Fe濃度と遅効性無機態リンの間と,速効性および遅効性無機態リンと生葉リン濃度の間には有意な正の相関が見られた。最大樹高は火山灰土壌で高い傾向が見られた。火山灰加入は直接的,間接的に土壌中のリンプールを増大させ,遅効性無機態リンから速効性無機態リンへの溶解・脱離,易分解性有機態リンの無機化による移動量を大きくし,高い速効性無機態リン濃度を保つことで植物へのリン可給性を増大させる施肥効果があると考えられた。

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