筆者らは,斜面の微地形に着目した表層土層厚分布と土壌物理性の特徴から,ブナ林土壌の保水能(渇水緩和機能および洪水調節機能)を量的に評価する研究を北東北の岩手県と秋田県で進めている。本稿では,秋田県北部の森吉山麓高原に位置するブナを主体とする天然林の一部を対象として,保水能に大きく寄与する表層土層厚の多点測定結果と,土壌が非常に厚い地点における土壌の透水性と保水性の測定結果について検討した。その結果,本調査地の表層土層厚は,全体の2/3を占める尾根から中腹にかけての微地形単位で平均2 mを超え,谷部と比較して非常に厚かった。また,代表土壌断面掘削直後に測定した深度別土壌含水率は,最表層のA1層を除き40~50%の値を示した。飽和透水係数はA1層とAB層で10−4 ms−1オーダーの他は10−5 ms−1オーダーであった。全孔隙率は最表層から深層に向かい徐々に低下する傾向にあったが,細孔隙率には大きな変化は認められなかった。以上の測定結果から,森吉山麓高原のブナ林土壌は,土壌が厚く含水率も高いため,渇水緩和機能・洪水調節機能ともに良好である可能性が高いことが明らかになった。