2022 年 37 巻 1 号 論文ID: 37.27
林道を災害時の代替路として見直す機運はあるものの,その機能の定量的評価手法は十分に確立されておらず,林道整備が中山間地域の防災基盤構築にどの程度効果的であるかは明らかでない。本研究では,林道の公益性評価を目的に,既往の接続脆弱性評価手法を改良した林道の代替路機能の定量化手法を考案し,岐阜県郡上市を対象に評価を行った。評価にあたり林道の代替路機能の概念的な整理を行い,代替路機能を有する林道を,避難起終点間の非重複経路数を最大化しつつ総所要時間が最小となる非重複経路集合(避難経路集合)に含まれる林道として定義した。そして避難経路集合は,起終点間の最小費用最大流問題の解として得られることを示した。対象地における避難起点(市内225 か所の避難所)と避難終点(郡上市市役所)間のすべての避難経路集合を評価した結果,約65%の避難所の避難経路集合に林道が含まれることが明らかとなった。提案手法は,正確な算定が困難な被災リスクによらず,ネットワークトポロジーの観点のみから林道の代替路機能の評価が可能である。評価結果は,代替路機能の観点から林道の開設・改良・維持管理事業を評価する際の支援情報になると考えられる。