抄録
林業作業における災害分析の結果,林業作業者の高齢化に伴う平衡性や敏捷性の運動機能低下に関連すると思われる災害,「余勢」,「手元が狂った」,「転倒」という動作中の災害が多いことが分かった。林業作業者の運動機能調査では,最大酸素摂取量(持久性),握力(筋力)の加齢による低下は全国標準値より小さいが,閉眼片足立ち(平衡性),全身反応時間(敏捷性)で低下が大きかった。林業作業者の高齢化状況に関するアンケート調査では,「持久力」,「脚力」,「柔軟性」の運動機能の低下は少なかったが,「視力」,「聴力」,「字を書く速度」,「記憶力」の機能は年齢とともに低下が著しい。林業作業中における作業者の手・足・腰の動作,背筋と足,腕と背筋の動く角度と角速度などを計測し,運動機能との関連を検討した結果,加齢に伴い低下する「平衡性」,「敏捷性」を特に使う作業として,巻立作業,伐倒作業があげられた。