日本森林学会誌
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論文
公共建築物への地域材利用による経済波及効果
―埼玉県すぎと幼稚園・すぎと保育園を事例に―
樋熊 悠宇至 立花 敏氏家 清和
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2019 年 101 巻 3 号 p. 115-121

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抄録

埼玉県の県産木材を使用して建設された埼玉県すぎと幼稚園・すぎと保育園を対象に,県産木材の利用が埼玉県にもたらす経済波及効果について埼玉県産業連関表を用いて推計した。推計では二つのシナリオ,すなわち県産木材の県外製材工場への流出およびその製材品の流入を含む実際の流通経路に即した基本シナリオ,素材生産・加工・流通が全て県内で完結した場合を想定した比較シナリオを設定した。その結果,基本シナリオでは生産誘発額計35,101千円,生産誘発係数1.09と推計され,比較シナリオではそれぞれ44,900千円,1.39と高くなったことから,県内で完結した場合の経済波及効果が大きいことが明らかになった。このことは,その促進が林業・木材産業の活性化のみならず県経済にとっても効果があることを示唆している。さらに,県内製材工場が横架材等に使用される平角に対するJAS認定の取得を検討しており,公共建築物への県産の構造材の供給が増加すると予想され,今後公共建築物への地域材利用による経済波及効果がさらに増加すると考えられる。

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© 2019 一般社団法人 日本森林学会
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