日本森林学会誌
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論文
  • 宮下 智弘, 渡部 公一, 工藤 佳世, 高田 克彦
    2021 年 103 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    雪圧害によるスギの根元曲がりは積雪地帯において幼齢期に発生する気象害である。本研究ではこの根元曲がりに対する晩材仮道管S2層のミクロフィブリル傾角(MFA)の影響を明らかにした。研究材料には抵抗性グループと対照グループを用いた。前者はこれまでの育種事業で抵抗性が高いと評価された6系統を用いた。後者は,同事業において抵抗性が低いと評価された3系統,精英樹,天然スギ,地スギを各1系統とする計6系統を用いた。これら12系統の胸高部からコアを採取し,髄からの年輪数を年輪番号と定義して測定対象とした年輪番号のMFAを測定した。抵抗性グループのMFAの値は全ての年輪において対照グループよりも小さく,3,5年輪ではグループ間に有意差が認められた。また,幼齢期に形成された年輪のMFAと根元曲がりの大きさには高い相関関係が認められた。一般的に,MFAが小さいと樹幹の曲げヤング率は高いため,抵抗性グループは対照グループよりも幼齢期の樹幹ヤング率が高かったと推測された。樹幹ヤング率が高いと樹冠への着雪による幹の傾く量は軽減されるため,この結果として根元曲がりの形成量も小さくなると考えられた。

  • 岩泉 正和, 那須 仁弥, 宮本 尚子, 磯田 圭哉
    2021 年 103 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    四国の固有樹種シコクシラベの集団レベルでの遺伝子保存(生息域外保存)について検討するため,石鎚山の成木集団の2豊作年(2011年,2014年)において母樹別に採種した種子プールの遺伝的多様性を,核マイクロサテライト(SSR)マーカー6座に基づき評価した。採種母樹間での種子プールの遺伝的多様性の違いについて把握するとともに,2014年種子のデータについて,母樹の無作為抽出プログラミングにより採種母樹数の増加に伴う種子プールの遺伝的多様性の推移を解析し,成木集団との比較を行った。その結果,胸高直径の小さい採種母樹ほど種子プールの遺伝的多様性が高い傾向が,2豊作年で一貫して認められた。希薄化曲線に基づく採種母樹数と得られる種子プールの遺伝的多様性の関係は統計量によって違いが見られた。しかし,対立遺伝子の有効数とヘテロ接合体率の期待値においては,おおむね30母樹前後で,成木集団と遜色なくかつ集団内の種子プールをほぼ補完するような遺伝的多様性が確保された。本研究の知見は,稀少樹種も含めた樹木集団の遺伝子保存のための種子の収集戦略(採種戦略)の策定に大きな示唆を与えるものである。

  • 井上 真理子, 大石 康彦
    2021 年 103 巻 2 号 p. 86-95
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    戦後の専門高校での「森林科学」(森林土木)関連科目について,「学習指導要領」(1947~2017年)と教科書をもとに,科目の教育目標と教育内容の変化を分析した。科目名は,戦後に「森林土木」,1970年代に3科目(「伐木運材」,「林業機械」,「砂防」)に分かれ,1978年に「林業土木」に統合し,1998年に「森林科学」(2章分)になった。教育目標は,荒廃地の復旧と国土の保全,林業機械や土木工事を含む木材の伐採・搬出の知識・技術の習得から,「森林科学」では森林の保全と利用に変わった。教育内容の項目は,戦後で一貫しており(4分野8項目),「概論(役割・安全),伐木造材(計画,伐木・造材,集材・運材・貯木),林業土木・機械(林道,林業機械),砂防(治山治水,砂防工事)」が挙げられた。教科書の記載は,技術の発展を受けて増加したが,「森林科学」で林業機械や砂防工事などの専門技術の記載が減った。森林土木の教育は,先行研究の「森林経営」と「森林科学」(育林)と同様に,専門教育の目標が専門的な職業人の養成から専門の基礎・基本に変わった影響を受けて,林業の実務的な学習が森林の保全・利用の学習になっていた。

  • 孫 鵬程, 貫名 涼, 柴田 昌三
    2021 年 103 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    本研究は,鹿児島県の管理モウソウチク林の生産状況と林分構造の現状を明らかにすることを目的とした。調査として姶良市とさつま町の2カ所の管理モウソウチク林における林分調査と竹林管理者に対する聞き取りを行った。その結果,管理者の高齢化に伴い竹林での重労働が困難になっている一方で,林分調査の結果(平均稈密度3,917本/ha,平均DBH 12.0 cm,新竹率30.6%,稈の一様分布)と施業現状から,対象竹林における管理(密度,施肥および防災管理)は現在も続けていることが考察された。一方で,国内需要の低迷などの影響から,竹材・タケノコの生産量は10年前と比べて顕著に低減していた。このことは調査林分における稈密度が過去より増加したことと一致していたことに裏付けられていると考えられた。今後,竹林は委託管理など新たな管理主体により管理を継続する場合,今までの竹林管理で集積されてきた技術,竹林生産などを参考情報として整理・記録する必要があると考えられる。また,作業がしやすい低密度かつ一様分布という林分の特徴を示す管理竹林を対象とした林業機械の開発と導入が,作業の持続性と省力化を改善する一つの選択肢として検討する価値があると考えられた。

  • ―全国のコンテナ苗生産者に対するアンケート調査より―
    小笠 真由美, 藤井 栄, 飛田 博順, 山下 直子, 宇都木 玄
    2021 年 103 巻 2 号 p. 105-116
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究は,本格的な生産が開始して約10年が経過した現在におけるコンテナ苗の生産様式の全容を調査し,現行の標準的な栽培方法と生産者が抱える課題を明らかにすることを目的とし,全国のコンテナ苗生産者を対象にスギ,ヒノキ,およびカラマツのコンテナ苗の育苗に関するアンケート調査を行った。その結果,生産者が実際に行っている育苗方法は関係機関が発行する育苗マニュアルと概ね一致するものであった。コンテナ苗の生産規模と生産様式の関係性の解析から,コンテナ苗の量産化には,生産の効率化・労務負担軽減のための生産基盤施設の整備と,裸苗生産に基づく育苗技術や生産経験が相対的に豊富であることが寄与していると考えられた。コンテナ苗生産に対する問題点として,出荷規格外(小/成長ムラ/直径不足等)や根鉢形成不良による歩留まり(得苗率)の悪さ,コンテナ苗の需要拡大等が挙げられ,得苗率を高める栽培技術やコンテナ苗の安定した需給体制の構築が求められていることが明らかとなった。

  • 海野 塁, 長坂 健司, 井上 雅文
    2021 年 103 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    志布志港から中国へ向けて輸出されているスギ丸太287 千m3/年が地域経済に及ぼす影響について,宮崎県,鹿児島県,その他45都道府県に生じる経済効果を産業連関分析によって評価した。2017年における同港からのスギ丸太の輸出額3,566 百万円を最終需要額とする場合,宮崎県,鹿児島県,その他45都道府県に生じる生産誘発額は,それぞれ2,936 百万円,2,507 百万円,1,425 百万円,粗付加価値誘発額は,それぞれ1,817 百万円,1,417 百万円,611 百万円,宮崎県および鹿児島県の林業部門における雇用誘発数は,それぞれ81.4 人,79.4 人であり,宮崎県,鹿児島県,その他45都道府県に生じる経済効果が認められる。スギ丸太からスギ製品の輸出に転換することによって,宮崎県の県内総生産は2.9倍,鹿児島県のそれは2.0倍となることから,今後の木材輸出戦略として,スギ丸太輸出からスギ製品輸出への転換が重要である。

  • ―滋賀県野洲川上流域を対象として―
    高橋 卓也, 内田 由紀子, 石橋 弘之, 奥田 昇
    2021 年 103 巻 2 号 p. 122-133
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data 電子付録

    森林に関わる主観的幸福度を測定し,得られた結果とその要因について検討した。滋賀県野洲川上流域を対象として,2018年に一般世帯を対象とするアンケート調査を実施した。因子分析の結果を踏まえ,森林に関する幸福度を満足度,充実感,プラスの感情,マイナスの感情の4種類に分類し,森林との関わりについての説明変数等による回帰分析を行った。農業,林業への従事は森林充実感と,個人所有林およびボランティアでの森林管理は森林満足度や充実感と正の相関が見られた。一方,地元の山の森林管理はプラスの感情と負の相関を示した。居住地域の森林比率と幸福度との間の相関は特定できなかった。森林所有は4種類すべての森林幸福度と負の関係が見られたが,これは森林の資産価値が低下し,森林管理の負担感が大きくなっていることを示すものと推測される。森林資源の量的な再生がある程度達成され,質的な面での改善が求められている日本の現状において,個々人が森林とどのように関わり,個人およびコミュニティの幸福度をいかに促進するか検討する上で,森林幸福度の構造的な(種類別の)把握が政策課題としても必要とされることを論じる。

  • 香坂 玲, 内山 愉太
    2021 年 103 巻 2 号 p. 134-144
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    2019年度に導入された森林環境譲与税(以下,環境譲与税)について,市町村は森林管理に関わり,税の使途も公表しなければならない。一方で市町村では受け皿の人材が不足しており,都道府県の支援が重要となる。本研究では,都道府県レベルにおいて①環境譲与税と府県単位の独自の超過課税(以下,県環境税)の使途の整理状況,②2020年度前後に設置された市町村支援の組織・会議体,③人事交流,④独自のガイドラインに着目して分析を行った。そもそも県環境税は各県に使途や背景に差異があり,全体比較には自ずと限界があるものの,二制度のすみ分けは主に間伐等の物理的な森林整備において府県間で対応が異なること等が特定された。支援では6県が独自にセンターを設置し,10府県が人事交流を実施し,県の普及員と市町村の職員を併任する制度を独自に導入した特徴的な事例(愛媛県)も存在した。17府県が森林経営管理制度または環境譲与税の独自のガイドラインを作成していた。41府県を対象とした定量分析では情報交換の会の設置状況は市町村数や私有林人工林面積率と相関があり,人事交流及びガイドラインの策定状況は譲与額との相関があった。

  • ―1 kmメッシュ解析雨量の精度検証と流域平均降水量の算出―
    浅野 友子, 鈴木 智之
    2021 年 103 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    山地流域は水の供給源であり,水収支の把握は水資源管理の観点から重要だが,標高の高い地域では観測が容易でないため情報が限られている。本研究では山地帯林と亜高山帯林からなる秩父山地の川又流域(標高628~2,475 m,流域面積94 km2)の水収支を求める。対象流域は面積が大きいため,降水の空間分布を考慮する必要がある。そこでまずは流域内外の地上雨量計による観測値を用いてレーダー雨量計による1 kmメッシュ解析雨量の精度検証を行い,月降水量,年降水量とも解析雨量は地上雨量計による観測値とほぼ1:1の対応関係があることを確認した。次に解析雨量を用いて流域平均降水量をもとめ,流出量の観測値とあわせて2009~2018年の年水収支を得た。平均すると年降水量1,747±245 mm y-1,年流出量1,375±220 mm y-1,年損失量が372±78 mm y-1であった。年損失量はほぼ年蒸発散量に等しいとすると,川又流域の年蒸発散量は,同じ関東地方の標高の低い流域と比べて数百ミリ小さいこと,また緯度の高い北海道や東北地方にある冷温帯林や亜寒帯林からなる流域と同程度であることが示唆された。

短報
  • 藤田 博美, 小林 藤雄, 藤田 徹, 中村 善剛, 上家 祐
    2021 年 103 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    京都府京丹波町質美に設定した1 haのマツタケ試験地において,1963年当時25年生のアカマツ天然林に環境調節(マツタケ発生環境整備施業:植生の手入れ,地表の腐植のかき取り)を行い,その後1998年までの36年間に形成されたマツタケのシロの分布と子実体の発生状況について調査した。その結果,1964年までに確認された12個のシロは,尾根筋とその周辺部の限られたところに集中的に形成された。次に山腹上部から中部にかけてシロが形成され,1970~1978年に確認したシロは約3/4が山腹上部より下に形成された。シロはさらに山腹下部に形成され,林齢45年生になった1983年から1988年にかけて形成された9個のシロは全て山腹中部~下部に形成された。シロ形成は1993年まで確認された。新たなシロは既存のシロの斜面下方に形成されることが多く,マツタケ発生環境整備施業は,既存のシロの斜面下方に実施することが有効と考えられた。

  • 平山 聡子, 岩井 淳治, 樋口 有未, 金子 岳夫, 森口 喜成
    2021 年 103 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー

    本研究では,新潟県の育種素材から様々な雄性不稔遺伝子を持つ個体を選抜することを目的として,無花粉スギ(ms1をホモ接合型で持つ新大3号と富山不稔1号,ms2をホモ接合型で持つ新大1号,ms3をホモ接合型で持つ新大5号,ms4をホモ接合型で持つ新大8号)と新潟県の育種素材137クローンを交配し,得られた179交配6,240クローンの花粉稔性を調べた。その結果,五泉市1号がms2を,カミキリ15号,佐渡天然102号,佐渡天然119号がms3を,カミキリ58号がms4をそれぞれヘテロ接合型で持つ個体であることが示された。また,東蒲原7号の自殖家系と新大3号×東蒲原7号の双方において可稔個体:不稔個体の割合が3:1に分離したことから,新大3号と東蒲原7号はMS1MS4とは異なる雄性不稔遺伝子に関してヘテロ接合型の個体である可能性が考えられた。新たにms2ms4を持つ個体が選抜された意義は大きく,今後の研究や品種改良に貢献すると期待される。

  • 小林 勇太, 堀内 颯夏, 鈴木 紅葉, 森 章
    2021 年 103 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 2021/04/01
    公開日: 2021/06/26
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data 電子付録

    樹木の高さと太さの関係は,成長や材積の計算,群集解析,森林動態のシミュレーションに至る様々な場面で利用される重要なアロメトリー情報である。本研究では,日本全土の毎木データを収集し,約26,000 本の個体情報から75種の樹高と胸高直径の関係をChapman-Richards(von Bertalanffy)式を用いて推定した。樹種ごとの推定結果は本文中に示し,データの出典および樹高と胸高直径の散布図は電子付録に掲載した。今後の森林管理・研究のための基礎資料として広く活用していただきたい。

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