日本森林学会誌
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最新号
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論文
  • 大平 峰子, 松下 通也
    2019 年 101 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    元肥および追肥の施用量がスギ実生コンテナ苗の成長に及ぼす影響を明らかにするため育苗試験を行った。元肥試験では,緩効性肥料A(N-P-K=12-8-10)を主肥料とし3段階の施用量(5~6,10~12,20~24 g/L)で育成した結果,10~12 g/Lまで施用量の増加に応じて苗高は大きくなったが,10~12 g/Lと20~24 g/Lとの間で有意差はみられなかった。追肥試験では,無追肥,液肥および緩効性肥料B(10-18-15)と緩効性肥料C(6-9-9)の3段階の施用量(1.5,3.0,4.5 g/苗)で育成した結果,緩効性肥料B 4.5 g/苗の施用で苗の成長,特に肥大成長が促進された。肥効が高い元肥条件(用土1 L当たり緩効性肥料A 20 g・腐葉土40 g・苦土石灰4 g)および追肥条件(苗当たり緩効性肥料B 4.5 g・苦土石灰0.9 g)で育成した結果,1年生苗の平均値は苗高36.2 cm,地際直径4.8 mmとなり,健全苗の69%が林野庁規格5号苗に達した。関東地方では裸苗の生産に2年を要するため,緩効性肥料の適切な施用によって実生コンテナ苗を育成することで,効率的に苗を生産できる可能性が示された。

  • 樋熊 悠宇至, 立花 敏, 氏家 清和
    2019 年 101 巻 3 号 p. 115-121
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    埼玉県の県産木材を使用して建設された埼玉県すぎと幼稚園・すぎと保育園を対象に,県産木材の利用が埼玉県にもたらす経済波及効果について埼玉県産業連関表を用いて推計した。推計では二つのシナリオ,すなわち県産木材の県外製材工場への流出およびその製材品の流入を含む実際の流通経路に即した基本シナリオ,素材生産・加工・流通が全て県内で完結した場合を想定した比較シナリオを設定した。その結果,基本シナリオでは生産誘発額計35,101千円,生産誘発係数1.09と推計され,比較シナリオではそれぞれ44,900千円,1.39と高くなったことから,県内で完結した場合の経済波及効果が大きいことが明らかになった。このことは,その促進が林業・木材産業の活性化のみならず県経済にとっても効果があることを示唆している。さらに,県内製材工場が横架材等に使用される平角に対するJAS認定の取得を検討しており,公共建築物への県産の構造材の供給が増加すると予想され,今後公共建築物への地域材利用による経済波及効果がさらに増加すると考えられる。

  • 伊藤 哲, 新保 優美, 平田 令子, 溝口 拓朗
    2019 年 101 巻 3 号 p. 122-127
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    乾燥条件下でのコンテナ苗の活着の優位性を検証するため,挿し木スギコンテナ苗(1年生および当年生)と当年生裸苗を8月に温室内のポットおよび屋外に植栽し,ポットには異なる潅水処理を施して,苗の樹勢低下過程を比較するとともに,1生育期終了時の苗の器官重量を比較した。毎日潅水区では全てのコンテナ苗が生残したが,裸苗は半数が枯死した。8日おき潅水区では,植栽から約3か月間で全ての裸苗が枯死したが,コンテナ苗では33~42%が生残した。無潅水区では植栽約1か月半で植栽した全ての苗が枯死した。露地植栽では,全苗種で耕耘を行った場所での樹勢が良好であり,生残率は1年生コンテナ苗,当年生コンテナ苗,裸苗の順に高かった。以上の結果から,乾燥が厳しい条件下でコンテナ苗が裸苗よりも有利に活着できることが実証された。生存苗は全苗種で枯死苗よりも実験終了時の根重が大きく,苗種によって閾値は異なるが,いずれの苗種も一定量の根量に達していれば枯死しにくいことが示された。また,当年生コンテナ苗は当年生裸苗より少ない根量でも生残する傾向が見られ,コンテナ苗の培地が少ない根量での生残を可能にしていることが示唆された。

短報
  • 香坂 玲, 梶間 周一郎
    2019 年 101 巻 3 号 p. 128-133
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    2018年に岩手木炭が林産物として国内では初めて,地理的表示保護制度に登録された。本稿は,地理的表示保護制度がいかなる制度かを概観した上で,岩手木炭が申請に至った背景ならびに過程を検証し,林産物特に木材の地理的表示活用の可能性と今後の展望を議論する。岩手木炭においては,申請の動機,申請を終えるまでの過程,品質の描写等の申請段階での困難,産品の品質規準などの項目を調査・分析した。その結果,申請主体と生産者の間の合意形成が円滑に進んだこと,生産のマニュアル化による品質管理が申請前から継続的に実施され,登録を果たす要因となったことが判明した。

  • 市原 優, 藤井 栄, 安藤 裕萌, 升屋 勇人
    2019 年 101 巻 3 号 p. 134-137
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/08/01
    ジャーナル フリー

    コンテナ苗生産において発生したスギ種子の発芽阻害の原因を明らかにするため,発芽しなかった種子の内部観察と,腐敗種子からの菌の分離を行った。播種2カ月後に発芽していなかった種子95粒は,健全30.5%,腐敗34.7%,虫害8.4%,空21.1%,不稔粒5.3%に区別された。腐敗種子から分離された糸状菌は Fusarium oxysporum と同定され,接種試験によりスギ種子腐敗の病原性が確認された。このことから,コンテナに播種したスギ種子の発芽阻害には,病原菌による種子腐敗が大きく関与すると考えられた。

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