日本森林学会誌
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論文
ナラ類集団枯損が発生したコナラ二次林における17年間のナラ類の生残と枯死
西川 祥子久保 満佐子 尾崎 嘉信
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2020 年 102 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

コナラ林におけるナラ枯れの進行過程とナラ類およびクリ(以下,ナラ類としてまとめる)の動態を明らかにするため,島根大学三瓶演習林の1 haのコナラ林で2001年から2018年の17年間のナラ類の生残および枯死,胸高直径の変化を調べた。ナラ枯れが確認された2012年から2014年の各年は枯死個体の分布も調べた。その結果,ナラ枯れ発生前は,ナラ類の小径木が枯死するものの胸高断面積合計は増加し,ナラ枯れの発生に伴い減少に転じた。ナラ枯れ発生初期の2012年と2013年はナラ枯れにより直径に関係なく枯死し,ナラ枯れが蔓延した2014年は小径木で枯死しやすく,ナラ枯れは谷で発生しやすかった。2013年と2014年は各1年でナラ枯れ発生前の5年分に近い本数が枯死した。2001年に426本あったナラ類は2018年に212本になり,ナラ枯れによる枯死率が18.1%,その他の要因による枯死率が32.2%と17年間ではナラ枯れによる枯死木の方が少なかった。しかしナラ枯れによって,短期間で枯死木が増加することに加え,大径木も枯死することで森林構造が大きく変化すると考えられた。

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