日本森林学会誌
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論文
ドイツにおける林業労働力の教育制度の実態
―バーデン・ヴュルテンベルク州におけるデュアルシステムを例に―
滝沢 裕子 伊藤 幸男山本 信次
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2020 年 102 巻 5 号 p. 281-287

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抄録

本稿の課題は,ドイツにおける林業労働力教育制度の実態を明らかにし,その制度の特徴と役割を明らかにすることである。バーデン・ヴュルテンベルク州の事例から次の4点が明らかになった。一つ目は,ドイツにおいて,林業作業士の育成は,他産業と共通の連邦の職業教育法に基づくデュアルシステムによって実施されていることである。二つ目は,職業教育制度は階層化された学校教育制度に位置づいており,毎年一定数の見習生が確保され林業就職者数も安定していることである。三つ目は,林業のデュアルシステムにおいて,州は,通常企業が担うOJTのかなりの割合を担っていることが特徴である。さらに修了生を一定期間雇用し,最終的には民間事業体への就職へと結びつけるなど,林業職業教育に果たす州の役割は大きい。四つ目に,OJTを担う自治体Albstadt市は,市有林直庸作業者の確保に加え,地域の民間事業体へ人材供給を行っていた。以上から,ドイツの林業労働力教育制度は,州を中心とした公的機関がデュアルシステムの両面を担うことで,民間事業体の経営に依存しない,安定的な育成が実現していると指摘できる。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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