本研究の目的は,高度専門資格である技術士(森林部門)の試験内容から,高度な専門教育を目的とする場合に大学教育に求められる森林科学分野の内容について考察することである。研究対象は技術士(森林部門)の試験内容(専門科目,必須科目,選択科目の3科目)とし,森林・林業実務必携の目次と日本森林学会の発表部門を参照して整理と分類を行った。その結果,専門科目と必須科目では,森林・林業実務必携の目次に掲載されている26章のほぼすべての項目と,教育部門を除く日本森林学会のほぼすべての発表部門から問題が出題されていた。特に,砂防や利用,林政などは,他に比べ毎年多く出題される傾向にあり,より重要視されていると考えられた。選択科目は森林土木,森林環境,林業・林産の3科目があるが,それぞれ砂防と利用,生態と林政,特用林産と造林に関する問題が多く出題されていた。よって,技術士(森林部門)の資格試験から見た大学教育に求められる森林科学の内容は,林産分野をも含む広範囲な内容であることが明らかになった。以上から,大学教育における森林科学の教育目的と,最低限の共通性や学問体系を振り返る必要があるといえるだろう。