2022 年 104 巻 5 号 p. 295-302
明治期以降の都府県民有林行政における森林技術者任用の歴史的推移を検討することが本小論の目的である。第一に,都府県に近代林学教育を受けた森林技術者が初めて任用された明治期から現代に至るまでの全国的な動向の通史について,史資料を用いて明らかにした。都府県民有林行政における森林技術者の任用は明治30年代の水害対応を重要な契機とし,次第に各府県に浸透する。木炭を嚆矢とする府県営林産物検査機関設置の要員確保のため,1930年代後半に府県森林技術者は急増した。戦後1.1万人にまで達した都府県森林技術者は1951年森林法下の民有林行政を支えたが,21世紀以降急減し,現在に至る。第二に,近代化の端緒と言える各府県初の森林技術者の任用者および任用時期を史資料から割り出し,導入期の森林技術者任用の特徴について解明した。府県における初の森林技術者の氏名を特定し,全府県の任用に1895(明治32)から1912(明治45)年の18年間を要したこと,1890(明治23)年卒業者数が卓越していること等の知見を得た。