2024 年 106 巻 3 号 p. 49-56
本研究はタワーヤーダを用いての集材可能な範囲を広域的に抽出することを目的としており,自走式搬器による下げ荷の集材が可能な範囲をGISを用いて抽出する方法を開発した。本研究では,谷の入り口をタワーヤーダの設置位置と仮定し,DEMを用いて対象林内全域での谷の入り口付近にある路線上に元柱となるポイントを作成した。続いて,GISで作成した可視範囲図等により,元柱から周囲360 °で尾根を越えない水平距離500 m以内の範囲を抽出し,架線の垂下を考慮して架線下高の算出を行った。また,各架線を架線下高によって5~80 mを集材可能範囲,5 m未満を要中間サポート範囲,80 m以上を搬器走行可能範囲の三つに分類し,集材区分図を作成した。実際に集材した範囲と比べると,下げ荷による集材がなされた範囲はほぼ全てが包含されており,抽出できなかった範囲は尾根を越えての架設がされていた範囲であった。本研究の手法は先柱やガイラインの設置可能性については現地での判断が必要であるものの,広域的にタワーヤーダによる集材可能範囲を把握するのに有効であると考えられた。