日本森林学会誌
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論文
北海道でのナラ枯れ初被害における被害木の特徴
内田 葉子 和田 尚之雲野 明徳田 佐和子升屋 勇人小林 卓也上田 明良尾崎 研一
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2025 年 107 巻 1 号 p. 8-15

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抄録

「ナラ菌」を媒介するカシノナガキクイムシの穿入によってミズナラなどのナラ類が枯死する「ナラ枯れ」の被害が日本各地で広がっている。北海道ではこれまでナラ枯れは報告されていなかったが,2023年に初めてナラ枯れによる被害木が発見された。北海道南部の松前町および福島町の5地点で現地調査を実施し,カシノナガキクイムシに穿入されたナラ枯れ被害木10個体16本を発見した。被害木はすべてミズナラで,うち2個体について穿入孔付近の材片から「ナラ菌」を検出した。穿入孔の多くは地際部にあり,枯死木9本の穿入孔数は1~17個と少なかった。また,枯死木は穿入生存木よりも穿入孔数および穿入密度が高かった。被害木は胸高断面積が大きいほど穿入孔数が多かったが,被害木の胸高直径を周囲の未被害木と比較すると,必ずしも大径木が穿入されていたわけではなかった。北海道でのナラ枯れの初被害は,枯死木は穿入生存木と比べて穿入孔数が多い点などでは先行研究と一致していたが,少ない穿入での枯死や大径木ではない個体への穿入など,本州以南の一般的なナラ枯れとは異なる特徴も見られた。

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