2025 年 107 巻 7 号 p. 149-155
かき起こし地でミズナラの成林を図ろうとする際にはカンバ類が主な競合植生となる。種間競争による成長への負の影響を考えるといずれかの時点でカンバ類を除伐することが求められる。一方で,樹形の通直性の維持の観点からは,枝分かれを抑制する高い本数密度が望ましい。そのため,成長と樹形双方への影響のバランスを考慮した除伐の適期の見極めが必要である。そこで本研究では,かき起こし後に堅果を播種し成林した17年生のミズナラ林を対象に,ミズナラの成長過程および樹形について,天然更新したダケカンバとの種間競争の影響を明らかにした。周囲のダケカンバの密度は,解析期間初期(5~11年生)にはミズナラの成長をむしろ促進する効果を示したが,後期(11~17年生)にはミズナラを被圧し,成長を抑制した。ミズナラのサイズは7年生時にダケカンバを下回り,その4~6年後に成長が低下する個体が多かった。一方,ダケカンバの密度は17年生の時点でも樹形の指標に正の影響を示した。除伐は,早期の時点だと成長および樹形に負の影響を示す可能性があり,むしろミズナラのサイズが競合個体を下回った後,成長低下が顕著になる数年の期間が適期と考えられた。