熊本県にある森林総合研究所林木育種センター九州育種場では,10年以上前から秋から冬にかけて原因不明のスギの雄球花の枯死現象(以下,雄花枯れ)が観察され,人工交配に必要な花粉が得られない場合がある。この雄花枯れの対処方法を検討するため,雄球花に不織布製の袋を設置する実験を行った。9月から毎月雄球花に袋を設置したところ,9月と10月の設置は雄球花の枯れを抑制する傾向が見られたが,11月以降の設置は抑制しなかった。一方,10月に雄球花に設置した袋を毎月外していった場合,11月に外すと袋を設置しなかった場合と同程度の雄球花が枯れたが,12月と1月に外すと雄球花の枯死率は低い傾向があった。また,袋掛けによって雄花枯れを抑制した雄球花から発芽能力のある花粉が得られた。これらの結果は,熊本県においては,9月上旬あるいは10月上旬頃に雄球花へ袋を設置することで雄花枯れを抑制できることを示唆し,育種事業に必要な花粉確保に向けた被害地域での適用が期待される。