日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
総説
線虫とキクイムシの関係:
キクイムシ関連線虫研究の現状と今後の課題
神崎 菜摘小坂 肇
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 91 巻 6 号 p. 446-460

詳細
抄録

ゾウムシ科 (Curculionidae) は線虫の媒介者, 寄主として最も重要な昆虫グループの一つである。中でも, 樹皮下キクイムシ類については多くの研究がなされており, 合わせて 100 種以上の寄生性, 便乗性線虫種が記載されている。また, これらのうち一部の寄生性線虫では生態が明らかにされ, 生物的防除資材としての利用の可能性も示されている。一方, 樹皮下キクイムシ類と非常に近縁な養菌性キクイムシ類から報告された線虫は非常に少なく, これまでに命名されているものはわずか7種である。樹皮下キクイムシ類と養菌性キクイムシ類の生活環境を比較すると, 食餌菌類の利用様式以外に特別大きな違いはみられず, 線虫相にここまでの差がみられる理由は明らかではない。また, Ruehmaphelenchus 属のように, これまでに養菌性キクイムシからのみ検出されているものがみられるなど, 養菌性キクイムシに特化した線虫グループが存在している可能性がある。しかし, キクイムシ類と線虫の関わりはいまだ明らかになっていない点も非常に多く, 今後, 線虫相や, その進化的背景を解明していく必要がある。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top