日本森林学会誌
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総説
キクイムシの生態:
食性と繁殖様式に関する研究の現状と展望
上田 明良水野 孝彦梶村 恒
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2009 年 91 巻 6 号 p. 469-478

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抄録

キクイムシ類 (キクイムシ亜科とナガキクイムシ亜科) の生態的多様性を, 食性, 配偶システム, 坑道型, 社会性の多様性から論じた。食性は, 植物のさまざまな部分に穿孔して基質そのものを食べるバークビートルと, 木質部へ穿孔して坑道に共生微生物を栽培しこれを食べるアンブロシアビートルに分けられる。配偶システムは, メス創設の一夫一妻, 同系交配の一夫多妻, ハーレム型一夫多妻, オス創設の一夫一妻に分けられる。また, 特異的な繁殖として, 半倍数性の産雄単為生殖と精子が必要あるいは不要の産雌単為生殖もみられた。坑道型は, 配偶システムと食性の両方の影響をうけて多様化していた。また, 社会性の発達についても論じ, ナガキクイムシ亜科のAustroplatypus incomperusのメス成虫が不妊カーストとなる真社会性の観察および, カシノナガキクイムシ (Platypus quercivorus) 幼虫の利他行動の観察例を紹介した。最後に, 直接的観察によるキクイムシの坑道内での生態解明とそのために必要な人工飼育法開発の重要性について論じた。

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© 2009 一般社団法人 日本森林学会
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