日本森林学会誌
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総説
混交植栽人工林の現状と課題
—物質生産機能に関する研究を中心に—
長池 卓男
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2012 年 94 巻 4 号 p. 196-202

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抄録

単一種植栽人工林に代わるオプションとして注目されている混交植栽人工林について, 利点・不利点, 物質生産機能への影響とそれをもたらすメカニズムや今後の課題などを論じた。混交植栽人工林は, 複数の種が植栽されることで生態的・生産的な便益がもたらされ, 広範な物品や生態系サービスを供給することが多い。これらの利点は, 多様な種へのハビタットや生態的ニッチが供給され林分レベルでの種多様性や生物間相互作用が維持・向上すること, 物質生産機能が高まることが多いこと, 等による。単一種植栽人工林に比較して混交植栽人工林で高い物質生産機能がもたらされるメカニズムとしては, 競争緩和と促進のプロセスが作用している。混交植栽人工林は実験的に造成されていることが多いが, 樹木や種の空間配置が規則的であること, 解析対象の多くが若齢林分であること, 等が問題点として指摘されている。混交植栽人工林をどのような目的を持つ人工林として造成するのかによって管理方法は異なるため, 導入にあたっての整理すべき課題は多い。多様な生態系サービスを供給するようにデザインされた人工林管理においては, 混交植栽人工林の利点が活かされるであろう。

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© 2012 一般社団法人 日本森林学会
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