日本森林学会誌
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論文
シカによりスズタケが退行したブナ林において植生保護柵の設置年の差異が林床植生の回復と樹木の更新に及ぼす影響
田村 淳
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2013 年 95 巻 1 号 p. 8-14

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抄録
ニホンジカの採食圧で1980年代後半からスズタケが退行したブナ林において, 同一斜面上で1997年と2002年に隣接して設置された植生保護柵 (以下, 1997柵, 2002柵) 内で, スズタケの回復と高木性樹種の更新のしやすさを, 柵を設置して7年後のデータから考察した。スズタケの稈高は1997柵内と2002柵内の両方で56∼75 cmであり同程度であった。スズタケの被度は1997柵内では経年的に増加する傾向を示したが, 2002柵内では増加しなかった。相対優占度でみると1997柵内ではスズタケと高木, 低木が18∼35%で競合したのに対して, 2002 柵内では低木が82%を占めていた。スズタケ稈高よりも高い更新木の密度は両柵ともに1,250本/haであった。以上のことから, スズタケの回復を目的として柵を設置するなら, 退行しはじめた段階で設置することが望ましいと考えた。一方, 樹木の更新にとっては柵を早期に設置する必要はないと結論づけた。どの樹種が林冠の後継樹となるかは引き続き追跡調査が必要である。
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© 2013 一般社団法人 日本森林学会
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