抄録
シデコブシとタムシバの雌雄を入れ替えた種間交配(正逆種間交配)を行い,種間交配の方向によって果実と種子の形成程度および形成された種子の発芽率に差異が生じるかを調べた。授粉から約60~90日後において,タムシバを母樹とする種間交配よりシデコブシを母樹とする種間交配で果実の脱落が多かった。また,結果率(成熟果実数/初期生残果実数)と結実率(成熟果実の種子数/成熟果実の胚珠数),雌性繁殖成功度(結果率×結実率)は,いずれもシデコブシを母樹とする種間交配の方が低い値を示した。種子の発芽率は,タムシバを母樹とする種間交配よりシデコブシを母樹とする種間交配で低かったが,統計的な差は認められなかった。したがって,自然条件下においてタムシバが母樹,シデコブシが父樹となる一方向性の種間交雑が生じるのは,主に,シデコブシを母樹とする種間交配において果実の成熟と種子の形成に障害が生じるためであると考えられる。