日本林学会誌
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小流域内地下水帯からの蒸発蒸散
塚本 良則
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1960 年 42 巻 1 号 p. 5-9

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抄録
河岸の植生の蒸散による水の消失量が非常に多く,河岸林木の伐倒にまり多量の河水め増力勝みられることは,すでに証明されている(参考文献8))。本論文では,との主として河岸植生による地下水帯からの蒸発蒸散量を水交学的に推定する方法について研究してみた。
地下水流出線の逓減状態が季節により変化することは広く知られている。その原因は植物の蒸散・蒸発による地下水帯からの水の消失と,地下水の温度差から来る水の粘性の違いが原因で地下水流出速度変化する,という2つのことが考えられる。東山流域では冬期 (1, 2月)における地下水流出は蒸発や蒸散に殆んど影響されていないので,この地下水流出曲線を積分したものらはその時における地下水の貯留量を示す。一方夏期 (7, 8月)の曲線を積分したものはその時以後無降雨日が続いた場合に期待される流出量を示し,これは貯留量とその水位が0になるまでの間に蒸発蒸散により消失する水量との差である。この2つの事実より地下本流串速度の差に無関係に地下水帯からの夏期における蒸発蒸散星を知ることができ, 1.45mm/日を算出した。
他方,この地下水帯よりの蒸発蒸散は地下水が常に供給されるのでポテンシヤルレート(蒸発散位)で起つているとみられる。そこでTHORNTHWAITEの方法によりこの夏期地下水流出曲線を求めた期間の日蒸発散位を求め4.88mm/日を得た。両者の比0.299と各日の蒸発散位とよりその日の地下水帯よりの蒸発蒸散量がわかる。また,これらのことよりこの流域の地下水帯から蒸発燕散に関与している面積は大約3割であると考えられる。
この方法による夏期7, 8月の実際の流出量と地下水帯からの蒸発蒸散によう消失量とを比較すると(第2表)夏期,河岸植生による地下水帯からの水の消失量が無視し得ぬものであることがわかつた。
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