日本林学会誌
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新しい立木材積表の調製に関する研究 (I)
2変数材積表とアルガン表(速進経理材積表)の実用性について
梶原 幹弘
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1965 年 47 巻 1 号 p. 23-29

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抄録

本報告はタイプの異なる2つの立木材積表-現行2変数材積表と速進経理材積表(アルガン表)-の実用性につき,主として大分地方スギの資料により検討したものである。
立木材積表はより簡単,かつ正確に,立木材積を求めるというその本来の目的よりして,実用上次の2つの条件を兼備している必要がある。
(a) 材積表自体が正確である。
(b) 構成因子は簡単かつ正確に決定できる。このような条件より検討した結果,次のことがわかった。
(1) 現行2変数材積表自体はよく適合するが,速進経理材積表は適合しないと認められる (表-1, 2参照)。
(2) 構成因子の決定において誤差がない場合,よく適合する2変数材積表によった時はもちろん,適合しないと認められる速進経理材積表によった時でも推定した林分材積における誤差は十分に小さく, 2つの材積表間ではその誤差はほとんど同じである(表-3参照)。この場合,速進経理材積表による推定林分材積の誤差が小さいのは,この材積表自体が持つ誤差の性質に起因するものである。
(3) 2変数材積表の1構成因子である樹高を測高器による測定-樹高曲線式法により求めた時,この材積表により求めた推定林分材積の誤差は十分に小さいが,樹高を目測-フリー・ハンド法により求めると推定林分材積の誤差はきわめて大きく実用に供しがたい結果となる(表-4参照)。
(4) 速進経理材積表により現実に林分材積を推定した時の誤差は,使用系列の決定方法により多少の差はあるが,いずれも実用に供しがたいほど大きくなることがあると考えられる。しかし, 2変数材積表で樹高を目測-フリー.ハンドで求めた時ほど大きな誤差を生ずる可能性はまずないであろう。
このような結果からすると,現実に使用でき,しかも推定した林分材積の誤差が十分小さくなるのは,測高器による測定-樹高曲線式法により求めた樹高を使って2変数材積表により推定した時のみである。しかし,このような方法で樹高を求めることは現実には決して容易なことではない。
したがって,ここで検討の対象とした2つの立木材積表は,いずれも十分な実用性を持つとはいえない。
しかし,表-2から一部うかがえたように各林分の材積曲線がほぼ並行するものであれば,その使用系列の決定がより容易,かつ正確にできるような方法さえ考案すれば,速進経理材積表のようなタイプのよく適合する立木材積表が2変数材積表よりもより高い実用性を持っであろうと推察される。

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