日本林学会誌
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林木の耐鼠性に関する研究 (III)
カラマツ苗のエゾヤチネズミに対する誘引性
西口 親雄有沢 浩
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1977 年 59 巻 4 号 p. 127-131

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抄録

カラマツが鼠害をうけやすいのは,エゾヤチネズミを誘引する成分をもつことに一つの原因があるといわれている。そこで室内飼育条件下で嗅覚実験を行なった。飼育籠に回遊式の通路をとりつけ,その下に供試餌を入れる餌箱を設置する。箱の上の金網蓋はスプリングで支えられ,ネズミがのった場合の振動は,糸で連結されたカイモグラフ上に自記される。記録された反応図形の形と長さから,餌に対するネズミの関心のつよさを比較した。供試餌はカラマツを中心とし,ほかにグイマツ(いずれも2, 3年生苗の幹部分)およびリンゴを加え,対照として無餌の場合の反応も調べた。結果(1)反応型を振動の有無とそのつよさから6個の基本型と2個の亜型に分けた。同一ネズミについてみれば,反応型はグイマツ<カラマツ<リンゴの順につよくなる傾向を示した。無餌の場合はカラマツに似ていた。(2)ネズミの個体別に2餌間で反応図形の長さ合計値を比較した。カラマツとリンゴの間では大きな差があり,カラマジとグイマヅではいくらか差がみられたが,カラマツと無餌の間では差がみられなかった。以上のことから,エゾヤチネズミはカラマツの揮発性成分につよく誘引されるとは考えられない。

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