日本林学会誌
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源頭部森林小流域における土壌溶液と湧水の硝酸態窒素の動態
加藤 正樹小野寺 真一小林 政広
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1995 年 77 巻 6 号 p. 516-526

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抄録
茨城県北部の結晶片岩地域に成立するスギ•ヒノキ人工林において,源頭部斜面の5カ所で表層から最下層部までの土壌溶液を採取するとともに,湧水を採取し,NO3-を中心に溶存成分の動態と土壌特性や水移動との関係について検討した。その結果,NO3-濃度は,土壌表層部では山頂部や尾根部,急傾斜の側壁斜面より谷筋の凹地形の部分で高かったが,各地点ともに土壌最下層部では痕跡程度の濃度に低下した。緩傾斜の凹地形で軟らかい土層が厚く堆積している部分では,1992年9月に5cm深で認められた約6meq/lのNO3-のピークが,徐々に濃度を低下させながら約9カ月後に50cm深,約14カ月後に100cm深に到達した。類似の傾向は湧水点近くでも認められたが,時間的なずれが小さく,濃度レベルも低かった。これらのことから,NO3-の動態は,各地点の水移動特性と密接に関連すると考えられた。湧水のNO3-は0.06~0.10meq/lで,土壌の最下層部より高い濃度を示した。NO3-やHCO3-濃度,NO3-/Cl-比の変動傾向から,湧水は土層深部や基岩層を経由した水と,土壌の比較的浅い層を流動する水が混合して流出することが示唆された。また,湧水は,流出地点によって溶存成分濃度が異なり,流出に至る経路や滞留時間に違いのあることが推定された。
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