抄録
ヤチダモの材質育種の可能性を検討するため,精英樹クローン,天然林および人工林木の個体の成長,容積密度数および生材含水率の特徴を調べた。樹高と胸高直径にはクローン間差が認められ,かつ早期評価の可能性が示唆された。人工林木材では,肥大成長が良好で,高い容積密度素数を示したが,天然林材では年輪幅が狭く,低い容積密度数であった。年輪幅と容積密度数との関係では,個体間に違いがみられた。このため,ヤチダモは,成長と材質に優れた形質を有した個体の育種が可能であると示唆された。一一方,供試木ごとの胸高部での平均の心材と辺材の生材含水率の範囲は,それぞれ68%から106%と41%から54%であった。すべての供試木は多湿心材であり,心材では辺材の生材含水率よりも変異が大きかった。凍裂が観察された部位では,心材含水率が非常に高く,かつ辺材含水率との間に大きな差がみられた。