日本林学会誌
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風化花崗岩山地源流域の渓流水NO3-濃度形成に対する水文過程のコントロール
勝山 正則大手 信人小杉 賢一朗
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2004 年 86 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

風化花崗岩山地源流域において,渓流水中のNO3-濃度形成に対する水文過程のコントロールの解明を目的に観測を行った。観測流域は斜面•堆砂地•河道から構成される。斜面内の土層-基岩境界面上で発生する飽和側方流の流出量,堆砂地地下水位および流域下端からの流出流量の観測に加え,各地点で水質観測を行った。渓流水中のNO3-濃度は流域内の観測地点で最も低く,また流量変動に対する応答をみると,流量増加時には濃度が上昇し,流量減少時には低下した。斜面部での水収支を考慮すると,降雨の約49%が基岩内に浸透し,この基岩浸透地下水が基底流出を構成する主要な流出成分であった。洪水流出時には低いNO3-濃度をもつ基岩浸透地下水に加えて,比較的NO3-濃度の高い堆砂地地下水が流出に寄与するため,渓流水中のNO3-濃度は上昇する。森林流域からのNO3-流出には流域の水文過程によるコントロールが大きく,特に基岩内からの地下水流出が,基底流出水のNO3-濃度を低く維持している。

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