日本林学会誌
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「林野火災応急対策シミュレーション」モデルの検証
-各務原市林野火災を例に-
菅沼 秀樹安部 征雄吉武 孝
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2004 年 86 巻 4 号 p. 337-348

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抄録

頻発する林野火災の予防対策立案のために開発された「林野火災応急対策シミュレーション」の感度特性分析と適合性の検証を2002年に岐阜県各務原市で発生した林野火災をモデルケースとして行った。感度特性分析は因子ごとに, 一元配置分散分析, ボンフェローニ多重比較, 直交表L16 (215) にて行った。延焼面積, 拡大延焼速度, 飛火着火数について検討したところ, 可燃物延焼速度比, 風向•風速, 林分平均樹高が非常に重要な因子であることが確認された。また, 林野火災延焼予測には, 飛火着火位置情報が重要であることが示唆された。モデルの適合性を検討した結果, 平均観測値を入力すると誤差が大きいことがわかった。入力値を最大観測値にするとある程度の適合性が確認されたが, 飛火着火の遅延や延焼速度の過小評価が確認された。適合性を向上させるためには, 飛火に関するパラメータの検討, 林野火災の燃焼熱による風系変化の加味, 可燃物延焼速度比の検討が必要であることが示唆された。ただし, 消防隊の配置や林道, 防火帯の設置に関する提案には活用できる可能性がある。

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