日本森林学会誌
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外生菌根共生系の生理生態とマツタケのパズル
鈴木 和夫
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2005 年 87 巻 1 号 p. 90-102

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抄録

生研機構「新技術•新分野創出のための基礎研究推進事業」として取り組まれた「森林生態系における共生関係の解明と共生機能の高度利用のための基礎研究」(平成8~12年度)の概要と,とくに学問的に関心の高い外生菌根菌マツタケに焦点をあてて論述した。まず,マツタケTricholoma matsutakeの識別として, rDNAのITS領域を用いて設計されたマツタケ特異的プライマーによって,マツタケ菌糸の有無を数mg以下の試料から確実に同定する方法を確立した。また,わが国のマツタケの多様性は, rDNAのIGS領域を用いて8タイプに分けられ, Aタイプが広範囲にわたって優占していた。ヨーロッパおよび北アフリカに分布するマツタケの近縁種T.nauseosumは分子生物学的には同種であることが否定できなかったが,今後,生物学的種の観点からの検討が必要である。「マツタケは外生菌根菌であるのか?」についての疑念は,形態的にも生理的にも典型的な外生菌根菌であることが,ハルティッヒネットの構造やATPaseの分布様式から示された。そして,マツタケ菌根の迅速人工合成法が確立され,マツタケ菌糸の親水性を高めて迅速な菌糸体の大量培養が可能となり,マツタケの人工シロの誘導が可能となった。

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