抄録
目的:乳がん治療により生じる更年期症状と,乳がん患者の心理社会面の関係について検討を行った。対象と方法:2007年10月から2008年11月までに乳腺外来を受診した187人を対象とした。調査に使用した質問紙はすべて自己記入式であり,更年期症状の程度を示すクッパーマン更年期指数(KKSI),抑うつ・不安尺度のHADS,がん患者のQOLを測定するFACT-G,乳がん患者に特化したQOLを測定するFACT-Bへの記入を依頼した。結果:KKSIの結果,更年期症状が6割に認められ,そのうち中等度以上の症状が6割を占めた。次に,KKSI の4つの重症度分類を基に,4群における一要因の分散分析を行った結果,更年期症状重度群が症状なし群,軽度群より有意に不安・抑うつの得点が高く,QOLが低かった(F3,17 ≧12.13,p<.01)。結語:乳がん患者が体験する更年期症状は,不安・抑うつおよびQOLとの関連性が示され,乳がん患者のQOLの維持・向上のため,更年期症状のコントロールが必要であることが示唆される。