抄録
精神病性うつ病のペースメーカー患者(男性,66歳)に対して修正型電気けいれん療法(以下,mECT)を施行した。本症例は,55歳時に徐脈性不整脈に対してVVIペースメーカーが植込まれ,58歳時からはうつ病相を繰り返したため薬物療法を受けていた。65 歳時から抑うつ症状とともに被害的な内容の幻聴と妄想が出現し,薬物療法によって改善されないため,当科に入院しmECTが施行された。mECTに際しては,施行前の循環器内科による心機能評価,施行前後のペースメーカーの動作確認,施行前の患者と地面との絶縁,ペースメーカー破損時の循環器内科による支援体制の確立などに留意した。その結果,ペースメーカーの破損や誤作動もなく,mECTを安全に施行し十分な治療効果が得られた。したがって,薬物療法によって治療が困難な精神症状を呈するペースメーカー患者に対して,mECTは安全で有効な治療手段の一つであると考えられた。