抄録
東日本大震災において,被災地の拠点病院となったが精神科医のいなかった石巻赤十字病院に対して,赤十字病院精神科医による精神科リエゾン診療支援を行った。平成23年4月から11月まで180日の診療を行い,162名の新規患者に対応した。入院患者では44%,救急患者では78%,職員では60%が直接または間接的に震災と関係のある病態であった。震災と関係のある患者の割合は月を経るごとに減少する傾向にあったが,震災から9カ月を経てもなお震災と関係のある病態の患者が存在した。精神科診断分類では入院患者ではF0が多く,救急患者と職員ではF4が多かった。症状別では,入院患者ではせん妄,認知症が多く,救急患者では不安を基盤にする病態が多かった。自殺企図によるものは入院患者の2割弱,救急患者の4割弱にみられた。今回の支援により,災害医療においても一般医療と精神医療の連携が必要であることが示されたものと考えられる。