抄録
自殺企図者の実態を把握し,救急医療,精神科医療を含む医療サイドから自殺対策の提言を行うことを目的に,和歌山県立医科大学附属病院救命救急センターを受診した全自殺企図者を調査した。9カ月の調査期間中に76名が受診し,そのうちの71%で過量服薬が認められた。5回以上の自殺企図歴のある患者は18名で,そのうちの83%で過量服薬が認められた。5名の自殺既遂者のうち4名は過量服薬による自殺企図歴があり,企図時期を特定できた3名は全員が過去1年以内に過量服薬をしていた。過量服薬による自殺企図は繰り返されやすく,それ自体の致命率は低いが,縦断的には既遂に至る可能性が高いと考えられた。自殺対策の方略として,過量服薬による企図歴がある患者に対する処方日数の制限・受診間隔の短縮と,救急隊,搬送先の医療機関,かかりつけの医療機関で情報を共有できるシステムの構築を提案した。