2017 年 29 巻 1 号 p. 37-43
生体腎移植におけるレシピエント・ドナーの不安を比較した研究は少ない。そこで新版STAI(STAI-JYZ)を用いて,両者の不安の表出について検討した。対象は2012年7月~2014年6月に生体腎移植を行った50組のうち,検査が実施できた46組92名である。STAI-JYZの値を従属変数とし,群間(レシピエント・ドナー),時間(術前・術後),不安尺度間(状態不安・特性不安)の3変数を独立変数とした三元配置分散分析を行った。その結果,群間と時間に主効果がみられ,ドナーはレシピエントよりも有意に不安が低く,術後が術前よりも有意に不安が低かった。また群間と不安尺度間に1次の交互作用がみられ,下位検定の結果,レシピエントは特性不安よりも状態不安が高く,ドナーは特性不安よりも状態不安が低かった。よって,ドナーは術前という不安が高まる状況にも関わらず,不安の表出が抑制的であることが示唆された。