精神疾患を有する症例に急性期の身体合併症が発生した場合,精神科と救急科が連携して診療を行えれば理想的である。しかし,実際には精神科医が身体合併症に対応する機会や,救急医が精神症状に対応する機会は多く,両診療科が互いの領域を学ぶ必要性は高い。そのため,当院では両診療科が連携して身体合併症症例に対応するだけではなく,人事交流を行い,共同で研修コースを開催している。救命センターで研修中の精神科医は,同センターに搬送される症例の精神疾患に対応しつつ,救急診療も経験する。一方,救急医は「救急医療における精神症状評価と初期診療(Psychiatric Evaluation in Emergency Care:PEEC)」コースを受講したうえで,当院の救命センターで精神疾患合併症例への初期対応を精神科医とともに実践する。これらの取り組みを継続するなかで,救命センターに搬送された自殺企図者の転帰にも変化がみられるようになった。当院の役割として,今後も地域の精神科医療と救急医療の連携に寄与できる人材を養成することが重要であると考えられる。