2018 年 30 巻 1 号 p. 28-37
小児抜毛症ではハビット・リバーサルなどの行動療法が有用とされるが,行動療法が奏効しない症例への治療の報告は少ない。このため児童精神科初診時に抜毛行動を認めた小児9例を初診6カ月後の治療転帰により分類し,患者特徴と治療アプローチを検討した。軽快群5例のうち自閉スペクトラム症(ASD)のない4例(年少男児・年長女児各2例)では,行動療法的心理教育を含む支持的アプローチが奏効した。ASDを有する1例では,ASD特性への対応,学校連携,家族療法的対応,遊戯療法などを併用した多面的な治療アプローチを行い軽快した。遷延群4例のうち2例にASDを認め,学校や福祉との連携を含む多面的なアプローチを継続した。初診時における行動療法的心理教育を含む支持的アプローチが奏効しない学齢期小児の抜毛症では,ASDの併存に留意し,ASD特性への対応や学校連携を含む多面的な治療アプローチが望まれる。