総合病院精神医学
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30 巻, 1 号
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特集:若手精神科医からみた総合病院精神科の研修・臨床・研究の未来
経験
  • 平山 貴敏
    原稿種別: 経験
    2018 年 30 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    精神科医を取り巻く環境は,医療の枠を越えて年々多様化しており,以前より幅広い分野で活躍が期待されている。総合病院精神科研修では,単科精神科病院の研修では補えない①多職種で連携できるコミュニケーション能力と集団力動を読む力,②コンサルティの真のニーズや不安な点を把握する力,③当該領域の事情を理解していること,などの能力を身につけることができる。これらの能力を身につけることで,精神医療以外の幅広い領域で機能することが可能となる。

    総合病院精神科研修の意義は,狭義の「精神医療」という枠組みを越えて,社会の様々な分野で現場の困りごと,ニーズを汲み取った適切な対応ができる精神科医になるための研鑽を積めることである。しかし,実際に働いてみなければ総合病院で働く魅力を感じるのは困難である。したがって,なるべく年次の若い時期に総合病院精神科で研修することが,現代の精神科医に必要な能力を養ううえで重要である。

総説
  • 文 鐘玉
    原稿種別: 総説
    2018 年 30 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    専門医制度の変革に伴い,2018年度から精神科の臨床研修制度(専門医研修制度)も変わることとなった。筆者の日米両国での臨床研修の経験から,新研修制度をより実効性のあるものにするための課題を考察した。系統的かつ実践的な研修を行い,バランスのとれた精神科医を育成するには,座学だけでなく活発な議論を伴うカンファレンスやスーパービジョンが重要である。特に力動学的精神療法やCBT といった精神療法の教育をしっかり行うべきである。それにはより多くの人材を研修医教育に巻き込む必要があり,かつそれを担保する経済的基盤も整備しなければならない。米国では研修医教育に公的保険の一部がつぎ込まれており,それは研修医1 人当たり年間12〜13万ドルにもなる。日本で政策的にこれを行うのはハードルが高いが,学会や関係団体の努力で,ある程度は補助が可能になるのではないだろうか。

総説
  • ─“御用聞き”的リエゾン回診の果たす役割─
    堀川 直希, 中村 倫之, 大島 勇人, 内村 直尚
    原稿種別: 総説
    2018 年 30 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    総合病院における精神科医の重要な役割として,コンサルテーション・リエゾンサービス(以下,CLS)があげられる。当院では,1983年から“御用聞き”的発想に基づくCLSを行っており,毎日受け付けているコンサルテーション以外に,毎週一度,依頼のあるなしに関わらず全病棟を回診している。

    “御用聞き”的リエゾン回診を行うことで,コンサルトとしてだけではなく,本来のリエゾンとしての役割も兼ね備えた関わりが可能となる。また,教育的な役割も大きく,上級医とともに精神科専攻医となったばかりの医師が回診に参加することで,治療技法について学ぶだけでなく,他科医師や多職種スタッフと連携しながら治療を作り上げていくやりとりを直に見ることができる。総合病院のなかで精神科医の役割やニーズが高まっている状況を知り,心を開いて周囲と連携していく重要さや面白さに触れることで,自らの精神科医としてのアイデンティティを育むよい機会となるものと考える。そのため,“御用聞き”的なリエゾン回診は,専攻医の研修にとっても非常に意義深い取り組みと考える。

経験
  • 西 智弘
    原稿種別: 経験
    2018 年 30 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    国内にがん診療連携拠点病院が整備され,がん診療の均てん化が国主導の形で進められてきた。そのなかで,がん拠点病院では標準的な緩和ケアをがんと診断後早い時期から提供していくことを目的に,「緩和ケアチーム」の設置が義務付けられた。緩和ケアチームは,医師,看護師,薬剤師,臨床心理士,栄養士などからなるチームであるが,そのチームの人員必須要件として「精神症状緩和医師」が定められている。緩和ケアチームの運用において,精神科医師の参加は大きな意義をもっており,その活動の幅も広いが,全国のがん拠点病院で精神科医師が充足しているとは言いがたい。また,がん患者や家族は,その疾患特異的な心理状態や問題を抱えており,がん診療に習熟した精神科医が求められている。

一般投稿
原著
  • 境 玲子, 藤田 純一, 青山 久美, 戸代原 奈央, 平安 良雄
    原稿種別: 原著
    2018 年 30 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2024/01/23
    ジャーナル フリー

    小児抜毛症ではハビット・リバーサルなどの行動療法が有用とされるが,行動療法が奏効しない症例への治療の報告は少ない。このため児童精神科初診時に抜毛行動を認めた小児9例を初診6カ月後の治療転帰により分類し,患者特徴と治療アプローチを検討した。軽快群5例のうち自閉スペクトラム症(ASD)のない4例(年少男児・年長女児各2例)では,行動療法的心理教育を含む支持的アプローチが奏効した。ASDを有する1例では,ASD特性への対応,学校連携,家族療法的対応,遊戯療法などを併用した多面的な治療アプローチを行い軽快した。遷延群4例のうち2例にASDを認め,学校や福祉との連携を含む多面的なアプローチを継続した。初診時における行動療法的心理教育を含む支持的アプローチが奏効しない学齢期小児の抜毛症では,ASDの併存に留意し,ASD特性への対応や学校連携を含む多面的な治療アプローチが望まれる。

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