総合病院精神医学
Online ISSN : 2186-4810
Print ISSN : 0915-5872
ISSN-L : 0915-5872
総説
大うつ病性障害に対する電気けいれん療法と維持療法のあるべき姿
─再発する患者を診た時に考えること─
栗本 直樹栗山 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 31 巻 1 号 p. 31-37

詳細
抄録

電気けいれん療法(ECT)は薬剤治療抵抗性うつ病に対して高い有効性を示すが,6カ月以内に4割近くが再発すると報告されている。ECT後の維持薬に関する主要なRCTでは抗うつ薬とLithiumの併用が再発予防に有効としているが,メタ解析では薬物療法単独よりも維持ECTの併用がより有効とされている。

一方で,うつ病がECT後に再発する要因は詳細に検討されていない。有効性の低いECTや,併用薬物により症状評価が不十分で寛解に至っていない場合,そして誤診がその理由にあげられる。われわれは上記条件を考慮し,ECTで十分な寛解を得た後に抗うつ薬単剤で寛解維持を試みた大うつ病性障害患者群の治療を再検討した結果,躁病相が出現し双極性障害に診断変更する症例の多くは再発出現時期が早く,再発頻度も高いことを見出した (相対リスク:2.91,95%信頼区間:1.59−5.33)。 Lithiumや維持ECTは双極性障害にも有効であるため,寛解維持にこれらを併用することは有効である。しかし,正確な診断の下,最小限の治療で寛解を維持できるのであれば,初回の再発危険性が多少高まったとしても,患者の身体的・経済的負担を軽減しQOL・ADLの向上に寄与する可能性が考えられる。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本総合病院精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top