2019 年 31 巻 2 号 p. 138-146
本稿では,総合病院でも経験され得るトラウマティック・ストレスについて,事故や疾患に直接関連して患者が経験するもの,子ども期の逆境体験のように通常は気づかれにくいが患者の現在の疾患・症状に関連し得るもの,そして医療従事者が通常医療および災害時において経験し得るものに分けて,これまでのエビデンスやその対応についてまとめた。 トラウマティック・ストレスは総合病院においても決して珍しいものではなく,PTSDの専門的な治療を実施できない場合でも,適切な心理教育やトラウマインフォームドケアを通常医療のなかに取り込むことで,トラウマティック・ストレスを抱えた人の回復の一助となり得る。そのような取り組みを行うためにも,日常臨床においてトラウマティック・ストレスという視点を意識することが重要と考えられる。