日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
術後短期間で再発増大を来した肺多形癌大網転移の1例
田村 亮小林 裕之今井 幸弘三木 明瓜生原 健嗣岡田 憲幸貝原 聡正井 良和宮原 勅治細谷 亮
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2010 年 43 巻 3 号 p. 299-305

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抄録
 肺多形癌の腹部転移巣を切除するも,術後3週間でほぼ術前と同じ大きさにまで再発増大を来した症例を経験したので報告する.症例は5か月前に肺多形癌を切除した既往のある50歳の男性で,食欲不振と倦怠感を訴え来院した.腹部CTにて左上腹部に腫瘍を認め,術前診断では消化管間質性腫瘍と判断した.入院後,腫瘍内への出血および自覚症状の増悪を認めたため,準緊急的に開腹腫瘍摘出術を実施した.病理組織学的検査結果は肺多形癌の大網転移であった.肉眼的な腫瘍の遺残は認めなかったが,術後19病日のCTにて術前とほぼ同じ大きさにまで再発増大した腫瘍を認めた.腫瘍はこの後も増大し,腫瘍の横隔膜および肝門部圧迫に伴う呼吸不全と閉塞性黄疸,および腫瘍内出血に伴う貧血より多臓器不全を来し,患者は術後46病日に永眠された.多形癌はまれではあるが,非常に発育が早く予後不良な腫瘍である.この腫瘍の腹腔内臓器転移について報告する.
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