2011 年 44 巻 8 号 p. 1018-1023
妊娠中に発症した急性虫垂炎は,しばしばその診断に苦慮することも多く,他の産婦人科的疾患との鑑別が必要になる.本症例は妊娠18週の患者で,上腹部痛を主訴に来院し,臨床所見および術前画像検査で急性虫垂炎が疑われたものの確定診断には至らなかった.腹腔鏡を施行のうえ,急性虫垂炎と診断し,腹腔鏡下にて虫垂切除術を安全に施行した.術後,合併症なく退院し,その後の妊娠経過も良好であった.腹腔鏡手術は妊娠時期により安全に施行できる点や,診断的治療が可能である点において有効であると考えられた.