日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
症例報告
食道癌陽子線治療後の難治性食道潰瘍の特徴とその対応
久倉 勝治寺島 秀夫永井 健太郎高野 恵輔只野 惣介榎本 剛史稲川 智橋本 孝之櫻井 英幸大河内 信弘
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2012 年 45 巻 12 号 p. 1145-1152

詳細
抄録

 筑波大学では食道癌に対し陽子線治療を施行し良好な治療成績を報告している.一方で,照射後食道潰瘍が56.4%の頻度で発生し,そのうち治癒不能な潰瘍を22.7%に認めている.陽子線照射後の難治性照射後潰瘍を当科では7例経験し,5例に穿孔または穿通を認めた.保存的治療を行った3例は合併症の制御が困難となり死亡したが,その後の2例は外科治療を施行し救命しえた.臨床的特徴として,初発症状が狭窄であること,初発症状から潰瘍形成,穿孔・穿通までの期間が1~2か月と極めて短期であり,すみやかな外科療法を検討する必要があることが挙げられる.手術所見の特徴として,潰瘍部位は周囲と強固に癒着しており剥離層の同定が困難であったが,血管障害を受けているため出血をほとんど認めず,鋭的操作により一度正しい剥離層を同定した後は比較的容易に剥離可能であった.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top