2012 年 45 巻 12 号 p. 1153-1160
症例は61歳の女性で,検診での上部消化管内視鏡にて胸部中部食道に粘膜下腫瘍を指摘され,当院に紹介受診となった.胸部CT,MRIにて気管分岐部背側に位置する境界明瞭な囊胞状病変を認め,bronchogenic cyst,もしくは食道duplication cystが疑われた.上部消化管超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography;以下,EUSと略記)にて,食道の固有筋層と囊胞壁の筋層間に連続性を認めたため,食道duplication cystと術前診断した.手術は右開胸にて囊腫を摘出し,食道壁欠損部は食道縦走筋を縫合し修復した.切除標本を病理組織学的診断した結果,囊胞壁は未熟な扁平上皮で覆われ,平滑筋層がよく発達しており,食道duplication cystと診断された.今回,EUSを用いて術前に食道duplication cystを診断しえた1例を経験したので報告する.