日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
浸潤性膵管癌にIgG4関連自己免疫性膵炎と硬化性胆管炎を合併した1症例
里吉 梨香佐藤 勤吉楽 拓哉岩﨑 渉小棚木 均
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2012 年 45 巻 5 号 p. 497-503

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抄録

 症例は79歳女性で,黄疸を指摘され入院した.US,CTで膵頭部に30mmの腫瘤を認め,MRIで膵尾部にもT1強調で低信号域の20mmの腫瘤を認めた.MRCPでは頭部主膵管に所見はないが尾部に不整な狭小化が認められた.膵頭部・尾部2か所の膵癌の診断で膵頭十二指腸切除,膵体尾部切除,脾摘を施行した.組織学的に膵頭部腫瘤は中分化型管状腺癌であり,胆管浸潤,十二指腸浸潤を認めた.膵尾部の腫瘤はリンパ球,形質細胞浸潤と線維化を認め,形質細胞の大半は免疫組織学的にIgG4陽性で自己免疫性膵炎と診断された.膵上縁胆管の均一に肥厚した壁にはIgG4陽性細胞の浸潤が認められ硬化性胆管炎と診断された.膵癌と自己免疫性膵炎の合併はまれなためそれぞれが異なる腫瘤と術前診断することはできなかった.胆管閉塞の主因も自己免疫性膵炎関連硬化性胆管炎と考えられ極めてまれで興味ある症例と考えられた.

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