2013 年 46 巻 3 号 p. 159-166
症例は65歳の男性で,右鼠径部腫瘤を自覚し当院を紹介受診した.13年前に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行し,病理組織学的検査では低分化腺癌t2(ss)n0M0 stage Ib(胃癌取扱い規約12版)であった.6年前に右後頭部皮膚転移に対し切除術および放射線治療の既往がある.右鼠径部に径3 cm大の弾性硬,可動性良好の腫瘤を触知した.頸胸腹部造影CTでは右鼠径部に27×25×12 mm大のリンパ節腫大を認めた.他に明らかな転移を指摘できなかった.局所麻酔下に右鼠径部リンパ節摘出生検を行った.病理組織学的検査で転移性腺癌と診断され,13年前の胃癌の転移として矛盾しない所見であった.胃癌の皮膚転移,鼠径リンパ節転移は,終末期にはしばしば見られるものの,単独転移は極めてまれで,胃切除後7年,13年を経た転移は非常に珍しい再発形式である.文献的考察を加え報告する.